謎多き世界遺産
ナスカの地上絵
ナスカの地上絵 Lineas de Nasca
ペルーのナスカ地方では紀元前 900 年頃から紀元 900 年前後にかけて様々な文化が花開いたが、紀元 100 年から 800 年頃にかけて栄えたとされるナスカ文化には過去、それまでどこにもない独特の特徴があった。それこそが太平洋岸から 50km ほど内陸の広大なフマナ平原のナスカ砂漠地帯に描かれた無数の巨大な地上絵だ。
地上絵は黒い石や砂を取り除いて、白い地表を露出させただけの、深さ約10cm、幅約 20cm 程度の浅い溝を、1本の線として、描かれている。誰が何の為に、何の目的で、夥しい数のこのような巨大な地上絵を描いたのだろうか。ナスカの地上絵の解明と保存に半生を捧げ、多大な貢献をしてペルー政府から勲章を授与されたドイツ人のマリア・ライへ女史はその半世紀にわたる研究の結果、天体の動きや星座との関わりあいから天文暦説を唱えた。
諸説が飛び交う中、現代では砂漠地帯で農業と漁業を営んでいたナスカの人々にとって最も大切な水を確保する雨乞いの儀式のために描かれたという説が有力になっている。ただしこの雨乞い儀式説にもいくつの異論があり、100% の解明には至っていない。
ナスカの地上絵は 1939 年にアメリカ人考古学者のポール・コソック氏によって発見された。以後、この地上絵が描かれた理由について諸説が発表されてきたが、その中には地上絵は地球外生命体により、宇宙船の発着場として造られたという説もある。宇宙人でなければ測量機器を持っていなかった古代ナスカの人々がどのような方法でこのような巨大な地上絵や幾何学模様の直線を、定規で書いたように正確にひくことができたのだろうか。数々の検証の結果、地上絵の端々をよく調べると、木杭の跡が見られたため、まず地面に小さな下絵を描き、それから長いロープを使って基準の杭から等倍率に杭を打ってロープを張り放射状に描いていく「拡大法」により描いたのではないかという結論に達した。当時のナスカ文化には文字が存在していなかったため、本当に上述のような拡大法を用いたのか確証する術はないが、この方法を利用すれば小学生でもナスカの地上絵を描くことができると実証されている。ただし拡大法は紐をまっすぐに張った状態でなければ描写できないため、200 メートル以上の地上絵を描くのは難しく、それ以上の大きさの地上絵の詳しい描き方は今もわかっていない。1000年以上前に描かれた地上絵は科学の発達した現代でも解明されないミステリーラインだ。
ナスカの地上絵への行き方
ナスカの地上絵は、首都リマからパンアメリカン・ハイウェイを約 450km 南下し、太平洋岸から約 50km ほど内陸に入った砂漠地帯にある。地上絵は基本的にセスナ機を利用して上空から見学する。現在 3 つの空港から遊覧飛行のセスナ機が飛んでいるが、この 3 空港と主要都市を結ぶ定期フライトは運航していないので、それぞれの空港までは陸路での移動となる。
リマから一番近いのはピスコ国際空港だ。陸路で南へ約 240km、車で約 3 時間半の場所にある。リマからの日帰り観光として、この空港からの地上絵遊覧飛行が日本人観光客に人気だ。ピスコ空港から地上絵上空までセスナ機で約 30 分、地上絵上空で約 30 分の遊覧飛行をして、ピスコ空港に戻ってくる。フライト時間は約 90 分。リマから日帰りで観光する場合は、早朝にリマを出発し、午前中にピスコ空港から地上絵上空の遊覧飛行に出発、終了後に昼食を食べてからリマへ戻り、帰着は夕刻頃となる。ピスコ近郊にはペルー国内屈指のリゾート地であるパラカスがあるので、そこに一泊するのもお薦めだ。1 日目にパラカスのリゾートホテルに宿泊し、2 日目の朝、リトル・ガラパゴス諸島ともいわれる「バジェスタス島クルーズ (P94 参照 )」をして、ナスカの地上絵遊覧飛行、そして午後リマ市内に戻るというプランが多い。
ピスコからさらに 75km ほど南下した場所に位置するイカ空港からも地上絵遊覧飛行が可能。イカまで足を延ばす場合は周辺のワカチナ ( 砂漠の中のオアシス ) やイカ考古学博物館も一緒に観光するとよいだろう。サンドバギーやサンドボードなどの砂漠でしか体験できないツアーがあるのもイカの魅力の一つだ。
リマから一番遠いのはナスカ空港。リマ市内から車で約 7 時間かかるため、ナスカまで行く場合はナスカの街に1泊するのが一般的だ。ナスカ空港から地上絵は近いので、約 35 分間の遊覧飛行となる。ナスカ近郊ではナスカ時代の墓地跡や水路跡、パレドネス遺跡などがお勧め。また日本からの援助によって 2020 年2月にオープンした、高さ 20m の展望台(ミラドール)から地上絵の一部を眼下に眺めることができるのも、ナスカまで長時間陸路で移動してきた人達だけの特権だろう。間近でみる地上絵は上空からとはまた違った感動を残してくれる。
リマから
ナスカの地上絵日帰り混載ツァー
リマからナスカの地上絵を日帰り観光する混載ツアー ( 主催:Movil Air/ モビルエア ) があり、現在最少催行人数は 2 名となっている。当ツアーはイカ空港を利用して遊覧飛行を行うツアーで、早朝 5 時頃に混載車両でリマを出発、4 時間かけてイカの空港へ。搭乗前に日本語のパンフレットが配布され、機内では地上絵の名称が英語とスペイン語で案内される。セスナ機は 12 人乗りの中型機で片側 6 席づつ、全席窓側なので地上絵が見やすいのが利点。セスナ機の飛行時間は約 70 分で、13 の地上絵の上空をパンフレットの順番通りに旋回する。イカ空港に帰着後、ワカチナ ( オアシス ) を訪問してリマに戻り、リマ市内には夜 20:00 頃の帰着となる。英語ガイドがリマから同行。
ナスカの地上絵遊覧飛行
ナスカの地上絵への遊覧飛行を行っている会社は数社あり、機体は定員 4 ~ 6 人乗りの小型セスナと定員10 ~12 人乗りの中型セスナの2 種類がある。中型機のほうが機体が大きい分、安定感があり、揺れがすくないというメリットがある。ただ窓が小さめで開けられない偏光ガラスを使用しているため、少々地上絵が見づらいなど短所もある。小型機は窓が大きめで、開けられる席もある。機体を傾けやすいので地上絵の写真を撮るのに適しているという長所があるが、反面音がうるさく、旋回が早くて飛行機酔いしやすいなどの短所がある。ナスカ空港は小型機、中型機のいずれも揃っている。ピスコ空港は中型セスナ機しか運航していないが、全席窓側席のため地上絵が人の頭で見えないという心配はない。いよいよセスナ機が空港から離陸、地上絵のあるナスカ平原へ。ナスカの地上絵上空までの飛行時間は、ピスコ空港から約 30 分、イカ空港からは約 20 分、ナスカ空港からはわずか 5 分程度だ。ピスコ、イカ空港からのフライトは、地上絵到着まで、木一本生えていない砂漠の山々を眼下にみながらの移動となる。緑豊かな日本では見ることのできない風景だ。異国に来ている感慨を抱くだろう。地上絵上空に近づいて来た。「ナスカの地上絵遊覧飛行」のルートは、どの空港から出発してもほぼ同じで、見ることのできる地上絵の種類も同じだ。通常 13 の地上絵の上空を 30 分かけて遊覧する。地上絵上空ではパイロットが何の絵が見えるか声をかけてくれる。乗客が日本人ばかりの時はカタコトの日本語で教えてくれることもある。セスナは左右どちらの席からでも地上絵が見えるように旋回する。一つの地上絵上空を飛行するのは 30 秒程度なので、見落とさないように。
ナスカの地上絵
集中エリアマップ