聖なる谷 Valle Sagrado
インカの聖なる谷巡り
クスコの北西部、ウルバンバ渓谷に広がる一帯は「インカの聖なる谷」と呼ばれ、インカ帝国の重要な遺跡や、インカに食料を供給していた農村などが広がるのどかで静かな場所。クスコやマチュピチュ観光の合間にのんびりと散策を楽しみたい。
オリャンタイタンボ Ollantaytambo
オリャンタイタンボは クスコから北へ約 75km、車で約1時間45分、ウルバンバ川支流のパタカンチャ川が流れ込む谷間に広がる農村で、村の川岸の平地と急な斜面に築かれたオリャンタイタンボ遺跡はインカの特異な都市建設の特徴を備えたインカ帝国の要塞遺跡だ。遺跡に入ると、まず水の寺院を中心に、沐浴場や儀式の泉と呼ばれる水道施設があり、また遠くから水を引く水路や貯水のための泉などが美しい加工の石組みで造られている。山の斜面に作られた段々畑の脇の階段を300段ほど登ると、6個の巨石を並べた不思議な建造物が建っている。この巨石は一つが約 100トンの重さで、太陽神殿の一部とされているが未だに解明されていない。
太陽の神殿へ行く途中にある展望台からは、周囲の山々やオリャンタイタンボ村の美しい眺望が楽しめる。
ウルバンバ Urubamba
ウルバンバはクスコから北西に約 73km、車で約1時間半。年間を通して暖かく穏やかな気候とウルバンバ川の水源に恵まれて、果物や野菜が豊富でかつてはインカ帝国に農作物を供給する拠点だった。 クスコに比べ、2,871m と標高が低く、高山病の心配が少ないため、クスコを敬遠してこの地に滞在する観光客が増加し、観光客向けの高級ホテルが増えている。
ユカイ Yucay
ユカイ村はクスコから北西へ約 68km、ウルバンバより約 5km ほどクスコ寄りに位置し、アドベ作りの小さな家が建ち並ぶアンデスの自然に囲まれたのどかな農村。古くからインカの給水技術が研究されていた場所で、その技術がインカの農耕に生かされてきた。
ピサック Pisaq
ピサック村はクスコから北へ 33km。小さな村だがピサック市とインカのピサック遺跡があることで有名である。この村はインカ帝国の名残をとどめる建物と植民地時代の建築が共存しており、村の中心部には色彩豊かな大きい市がある。このピサック市は毎日 08:30-16:30 に開かれているが特に出店の多い火・木・日がおすすめ。市では陶器や布製品、革製品、銀製品、石細工、タペストリーなどの民芸品の他に、日用品から食料品まで、何でも売っているので、地元の人々にも人気がある。村を見下ろす小高い丘の上にあるピサック遺跡はマチュピチュの遺跡ほど規模は大きくないものの、天体観測所があることや、遺跡の石組みの加工がインカ建築の中でも最も完成度が高いことで知られている。建築素材はピンク色の花崗岩が多く使われているのもピサック遺跡の特徴の一つで、他にも日時計や灌漑施設を利用した段々畑も興味深い。遺跡の上からの眺望は本当に素晴らしい。
チンチェーロ Chinchero
チンチェーロ村はクスコから北西に約 28km、スペイン植民地時代に建てられた綺麗な教会が目を引く小さな村で、教会の前の広場では毎週日曜市が開かれている。教会の裏手にはかつてインカの要塞だったチンチェーロ遺跡がある。
モライ遺跡 Moray
モライ遺跡はクスコの北西、約 58kmに位置するマラス村から、さらに7km ほど離れた場所にあるインカ時代の農業試験場だったとされる遺跡である。大小4つの円形の遺跡があり、その最大のものは直径約100m、深さも同じく 約100m もある巨大な遺跡だ。円形に広がる段々畑に植物を植えて、その高さによる温度差を測り、異なる環境で育つ植物を研究していたといわれている。
マラスの塩田 Salineras de Maras
クスコの北西約 58km に位置するマラス村から、さらに車で 15 分の山あいにあるマラスの塩田はプレ・インカの時代から約 600 年も続く、貴重な塩田。アンデスの渓谷から湧き出る塩分濃度の高い温水を棚田に貯め、天日に干してミネラル豊富な天然塩を採取している。天然塩は塩田入口の売店で購入可能。山の斜面を数 km にわたり占有する棚田の数はおよそ約 3,800 枚。インカ時代にはその何倍もの塩田があったとされる。塩田の真っ白な景色が見られるのは乾期の 5 月~ 9 月。乾季に入ると塩の生産が開始され、雨季が始まる前の 10 月頃まで続く。雨季は土砂が混じるため、殺風景な景色となる。